日本を代表するベテラン自転車ジャーナリストのお2人、菊地武洋氏と山本健一氏が、Probikeshopのオフィスで対談! 最終回は2021年に注目しているアイテムを挙げていただきました。お2人の対談、お楽しみください。

新型デュラエース(R9200)の登場に注目

菊地:コロナ禍によって、いろいろなことが予測しにくいんだけど、2021年に最も期待しているのは、なんといっても、新型の(シマノ)デュラエースだろうな。

山本:モデルチェンジがあるというのは、オフィシャルに発表されているわけじゃないですけど、新型が発表されるって噂ですね。

菊地:シマノは2021年で創業100年だし、これまでのスケジュールを考えるなら、そろそろフルモデルチェンジのタイミングだもん。ブレーキの形式もリムブレーキからディスクブレーキになるなどロードバイクを取り巻く環境も変わっているので、いやが上にも期待は高まるよね。

山本:どういうスペックになるのかって、みんなの予想もいろいろあって盛り上がってますよね。

菊地:スプロケットの12速化や、従来のワイアードに替わって無線方式のDi2になるとか、噂はいろいろあるね。他にも、昨年、パイオニアがサイクルスポーツ事業をシマノに譲渡したこともあって、今後の展開がいろいろ楽しみだよ。まぁ、プロレースが開幕すれば、プロトタイプが見られるでしょう。

2人とも買っていたフロントバッグ

菊地:話は変わるけど、クラウドファンディング系の製品はユニークな製品が多くなってきたので、以前よりもチェックするようになった。

山本:たとえば?

菊地:この間、買ったのは、フロントバッグ。

山本:へぇ。どんなヤツですか?

菊地:ポタリングするときにカメラを入れられるバッグが欲しくて探していたの。そしたら、蓋の部分がプラスチック製で、サイクルコンピュータやライトのマウントがある製品をクラウドファンディングサイトで見つけて…。バッグの形状もそうだけど、ハンドルマウント方式なども使いやすそうだったので、衝動買いしちゃった。他にもヘルメットやライト、鍵関係もユニークな製品が多いよ。

山本:アイデア商品みたいな感じですか?

菊地:そうそう。今までだったらサイクルショーで新製品をチェックするだけで十分だった。けど、イヤーモデル制も崩れてしまったし、より広い範囲に向けてアンテナを張っていないとね。

山本:通販サイトも面白いですよ。ウインドーショッピング的な楽しみがあります。実は、僕もフロントバッグを買ったんですよ。

菊地:え、そうなんだ。レース指向の山本くんっぽくないね。

山本:そうですか? フロントバッグ、めちゃくちゃいいですね。バイクパッキング用の大型サドルバッグって、カッコいいから欲しくなるでしょ。

菊地:ま、カッコはいいね。

山本:でも、ダンシングできなかったり、後ろ荷重になってしまったり、デメリットもそれなりにあるんですよね。フロントバッグなら荷重バランスが大きく崩れたりしないし、空気抵抗はちょっと増えるけど、取り出しやすいし、いいアイテムだと思います。

菊地:2人してフロントバッグを買うのって、我々のことを知っている人からしたら意外に見えるだろうね。

山本:そうですね。でも、便利だし、スタイリッシュな製品が増えていますからね。

素材の進化で着心地が向上しているウエア

菊地:ウエアの進化って数字で表現しにくいからアピールされていないけど、このところの機能的な進化って大きいと思わない?

山本:レーサーパンツのパッドとかもそうだし、ソックスも薄手でエアロになったりだとか。そういう進化は本当に感じますね。

菊地:素材の伸縮性もすごく向上しているから、身体の動きにフィットするし、縫い目が減って、着た感じも気持ちがいい!

山本:しかも、耐久性が上がって、劣化もそんなにしない。以前だったら、洗濯でかなり傷むこともあったけど、それもないですよね。

菊地:デザインの好き嫌いは別として、自転車用のウエアは高い機能性が求められるから、生地にコストがかかってしまうこともあって、性能が価格に比例しがちだよね。最近は廉価なウエアがずいぶんと話題になってるけど、パフォーマンスも、それなりだと考えるべきだと思う。

山本:そうですね。そこは気を付けて選んでほしいですよね。

進化しているヘルメットの機能

山本:地味に進化しているといえば、ヘルメットも進化しているのを感じますね。

菊地:あー、確かにそうだね。

山本:二極化してますね。日本人は小柄で体重も軽いせいか、比較的軽いヘルメットを好みますけど、ヨーロッパは軽さよりも安全性を重視した製品が出てきてますよね。スタイリングはごつくなっても、ウェーブセルやミップスといった安全機能を搭載しているでしょ。

菊地:そうだね。ヘルメットは安全装備品だから、その実力を感じることなく交換するのが理想なんだけど、同じ条件で性能を確認できない。だから、新しい安全規格や重量といったうたい文句や数字に惹かれてしまうよね。ミップスは、登場したと思ったら、すぐに進化し続けているし、気になってるよ。

山本:他にもヘルメットにGPSトラッカーがついていて、スマホと連動させれば落車位置を家族に伝えてくれる製品もありますよね。命を守るという本来の機能をキチンと進化させていると思います。

菊地:ロードバイクはマウンテンバイクよりも、転倒に対して積極的に取り組んでいるとはいえないから、せめてヘルメットぐらいはしっかりとしたモノを選んでほしいね。

山本:ええ。

菊地:僕はヘルメットを被っていなかったら、何度か死んでいると思う。ただ、GPSトラッカーについては、尾行されているみたいで嫌悪感があるな。

山本:菊地さん、自転車に乗る時にスマホを持っているでしょ。ハンドルにはガーミンのGPSもついてますよ。

菊地:そうなんだよねぇ。もう避けて通れない。でも、やっぱり気持ちが悪い。ウェブでもそうだけど、トラッキングデータを使って「そろそろタイヤの交換時期です!」なんてアラートが出てくるようになったら、便利だともいえるけど、やっぱり気持ち悪いな。山の中で、一人で落車したときに、自分の状況を家族に連絡してくれるのは、便利だとは思うけどね。

山本:事故や転倒を考えたら、保険みたいなもんですよ。

菊地:何はともあれ、怪我をしたらサイクリングも台無しになってしまうので、気を付けて走るしかないね。他のプロダクト関連は前回でも触れたワイドリムやワイドタイヤなどが、継続進化していくんだろうけど、予想外の面白い製品が出てくるといいね。

山本:なにか次のトレンドにつながるような製品も、きっと出てきますよ。

菊地:さて、今回は対談に登場してもらったんだけど、今後は記事の方もよろしくお願いします。

山本:こちらこそ、ありがとうございました。また、よろしくお願いします。

対談を終えて…

山本くんといえば、同業の中でも、いちばん敵に回したくない一人です。なにせ、走らせれば速いし、上手い。基本的には競技系だけど、趣味的な領域にも視界が広い。そんな彼がツーリングアイテムまで造詣が深くなっているのは、ちょっと驚きでした。ですが、レースができなかった2020年のことを思うと、ロングライドに活路を見いだすのも自然なことだったんでしょうね。

最近、私がツーリング的な遊びに回帰しつつあるのは、最新のロードバイクがコモディティ化して、買い替える動機を刺激しなくなってきているから。

アプローチは違うのに2人してフロントバッグを買っていたことは、2021年の空気感を表わしているんだと思いました。

まだ、レースシーズンも始まっていないし、コロナ禍の出口も見えない状況ですから、誰も先のことは分からない。ただ、世界的にみると自転車はものすごく売れています。国内においても、すでに納車が12月になるとか、2021年モデルが売り切れて、2022年モデルの案内が始まったとか、ちょっと信じられないようなことが起きています。コロナ禍前は不良在庫が投げ売られていましたが、それもすっかり昔話です。

2021年は、リムブレーキからディスクブレーキへ、そして、デジタル化へパラダイムシフトが始まった年となる……ユーザーの立場としては、それが正しい姿というか、あるべき姿だと思います。しかるべきタイミングまで言えないこともありますが、2021年は変革の年になります。

1つ言えるのは、新しいことに否定的になってはいけません。スプロケットは多段化するたびに、○速は不要だという話が出ます。でも、そうやって大騒ぎした人も、時間の問題で新しくなったコンポーネントを使うようになります。新しい規格や製品の情報は、旧来の製品よりも少ないのが常です。リムブレーキとディスクブレーキの問題も、そこにあります。電動コンポーネントに否定的な人も、同じです。使ってみて、その製品の可能性を評価するか、現状の実力を評価するのか、声を上げている人のスタンスを注意深く読み解いて下さい。

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菊地武洋

菊地 武洋(きくち たけひろ)

自転車ジャーナリスト。
80年代から国内外のレースやサイクルショーを取材し、分かりやすいハードウエアの評論は定評が高い。
近年はロードバイクのみならず、クロスバイクのインプレッションも数多く手掛けている。
レース指向ではないが、グランフォンドやセンチュリーライドなど海外ライドイベントにも数多く出場している。



山本健一

山本 健一(やまもと けんいち)

サイクルジャーナリスト(人力バイクのほう)。
ジャーナリスト歴20年、自転車競技歴25年の公私ともに自転車漬け生活を送る。新作バイクレビューアー、国内外レースイベントやショーの取材、イベントディレクターなど、活動は多岐にわたる。