勝利の証は、大好きなブラジルと同じ色で!
『Outfitter Cup』の優勝チーム、川崎ジュニアフットボールクラブ(KJF)の練習を見学するため、川崎市立宮前小学校の体育館を訪れました。
2022年10月23日、千葉県佐倉市で開催されたU-10による五人制フットサル大会「第11回Outfitter Cup」にて、見事勝利を飾ったのが川崎市の川崎ジュニアフットボールクラブ(KJF)でした。
そのKJFの優勝した選手たちに会うため、フットサルの練習をしている川崎市立宮前小学校の体育館を訪ねました。
「Outfitter Cup」は、日本初のサッカーを通した教育をテーマにしている情報サイトの「サカイク(株式会社イースリー)」が主催。フットサル競技を経験する中で、子どもたちの健全な精神を育むことを目的に開かれています。大会は、ただ勝利を目指すのではなく、試合を目指す中で思いやりや自立心を養っていくこと、他のクラブ選手との交流や、仲間意識を持ちながら大切な友情の絆を得るきっかけになっています。
普段はサッカーを中心に練習。さらに日曜日はフットサルで技術を磨く
KJFは1991年に設立されたクラブです。川崎市川崎区内の幼稚園から小学生が集まっており、フットサルは4年から6年生がプレーしています。
「Outfitter Cup」には、4年生チームを2つに分けて出場。開催場所が千葉県佐倉市だったこともあり、出場した16チームのほとんどが千葉県内のチームでしたが、KJFは唯一神奈川県のチームとして参加しました。
交代選手ではなく、どの選手も試合に参加させたかったと話す高橋監督
フットサルチームの高橋勇監督に、「Outfitter Cup」への出場についてお聞きすると、
「子どもたちに試合経験をたくさん積ませたくて、よく大会情報を探しています。その中で、優勝するとOutfitterユニフォーム11枚分を無料で制作できると知り、これだと思いました」と笑います。
監督の息子さんがKJFの選手だったとか。すでに息子さんは卒業されたようですが、現在もフットサル部門の監督をしているそうです。
試合結果を見ると圧倒的な勝利を収めたKJFチームですが、普段どんな指導をしているのでしょうか?
「U-10に出た4年生の子どもたちは、元気すぎて大人の言うことは聞かないですよ(笑)もちろん試合は勝たせたいです。しかし、勝ちを目的とした練習は、子どもの気持ちには刺さりません。監督だから大人だからと上から抑えるような指導はダメだと思い接していますね」
となると、どんな指導法をしているのでしょうか?気になるところです。高橋監督にそれを尋ねると、
「練習に楽しみを持たせるようにしています。まずボールがいつも足元に収まるようにする。リフティングもですが、たくさんボールに触ってボールに慣れさせていきます。できるという楽しい気持ちが続いてそこから、試合に勝っていくことでまた楽しくなる。そうすることで自然と勝ちへの気持ちが育っていくと思っています」と話します。
ボールを自在にコントロールできるよう基礎練習を大切にしています
監督が繰り返し教えているのは、ボールを見ないでコントロールできること。足元にボールを収められるようになるのが基本だといいます。
例えパスをうまくだした選手がいても、それを足元にきちんとキャッチできなければパスも繋がらないし、シュートもできない。結果的に試合運びができないということでした。
そして、踏み込んで教えていくのは、相手の後ろを見て動いていくということ。相手の動きの裏をかくという駆け引きだそうです。これをたくさんパターンとして練習させているといいますが、4年生では全てを理解しなくてもいいと考えているといいます。
これは練習をしているうちに、学年が上がれば、体感としてあの時話していたことだと分かるようになり、状況を理解するように必ずなるからだと。
ゲームを面白くする駆け引きもパターンを繰り返し練習
今回の優勝のご褒美ですが、監督から見て選手たちはどうでしたか?
「やはりユニフォームを作るというのは、なによりも本当に喜びましたね。子どもたちのおーっという歓声がいつもと違いました」
KJFの優勝チームが選んだのは、ご覧の通り世界のブラジルと同じ黄色のトップスに青色のパンツ。ウエアも同じNIKEでした。
ご自身も小中学校ではサッカー少年だったという酒井コーチ
ユニフォーム作りの中心になったU-10を担当する酒井康大コーチに話を聞きました。
ユニフォームのデザインの決め手はなんでしょうか?
「大会の後は、ちょうどサッカーのワールドカップが始まるということで子どもたちも盛り上がっていましたね。そうなるとやはりブラジル、ネイマールということで、このウエアに決まりました」
サイズもちょうどよく揃ったということもあり、ブラジル選手と同じNIKEで作ることができたそうです。
「ユニフォームはもう一人のコーチと一緒にロゴや仕上がりなどを考えました。サイトで試しながら簡単にできるのはいいですね。そこで試したものと実際にできあがったものがイメージしていた通りというのもよかったです」と酒井コーチ。
スポンサー選びについては、大会のスポンサーだったこともあり、試合の記念にしたいということで、「ポカリスエット」と「エバラ」を選んだそうです。できあがったユニフォームを手にした選手たちはどんな様子だったのでしょうか。
「それはもう喜んでいました。その時の様子を動画に撮っておけばよかったですね(笑)。自分たちの特別なユニフォームという意識があるみたいで、それを目にした他の学年にも影響がありました。Outfitterで作ったユニフォームは、本人たちだけではなく、みんなのやる気を押し上げてくれた気がします」
KJFのユニフォームは赤色が基本。練習はそれぞれ好きなウエアを選ぶそうで、もちろん勝利メンバーは、Outfitterで作ったユニフォームを着ていました。
酒井コーチはこんなことも子どもたちに伝えていると教えてくださいました。
「ここにくる子どもたちには、技術以外にも礼儀を特に厳しく教えています。体育館に入ってカバンの置き方、水筒の置き場所、靴を揃えるといった基本もですが、挨拶をしっかりすること。そして仲間で育っていくようにみんなで助け合うことの大切さも指導しているんですよ」
人として成長しながら、強さであれ勝ちであれ、繋げていってほしい。手にした勝利のユニフォームに相応しい選手になっていてほしいと願っていると語ってくださいました。
左から河端君 酒井君 熊切君
そして、休憩をしていた勝利選手を代表して、酒井君、河端君、熊切君に話を聞かせてもらいました。
まずユニフォームついて伺うと、何よりうれしかったのは、プロ選手のようにロゴがついていることだそうです。すごく大人になった気持ちがするということで、
「ポカリスエットもエバラも普段からよく知っているし馴染みがあるので、ウエアに着けてもらったことで、さらに愛着がわきます」と全員揃って答えてくれました。
「これを着ていると、ほんと羨ましがれるのがいいです。勝った選手の証だから」と酒井君が胸を張って話してくれます。
気になる今大会について熊切君は、
「試合でこれをやろうってみんなで話し合っていました。組み立てた作戦がうまくいって点数を取れたことがうれしかったです。そしてまた次の大会でも絶対優勝したい」と感想を教えてくれました。この言葉に、3人とも大きく頷いていたのがとても心に残りました。
これからの目標については、フィジカルや体感をしっかり鍛えて、これから始まる地域の試合にまずは勝っていくこと。強豪ともどんどん試合をして経験を重ねて強いチームになると、語ってくれました。
水筒の水をごくごく飲みながらまた仲間のところに戻っていく3人の姿は頼もしかったです。
黄色と緑の鮮やかなユニフォームが走り去り、コートでは元気いっぱいな子どもたちが練習を再開していました。
この日は、4月から1年生になるお子さんたちの体験練習もあり、未来のU-10たちが眩しそうにその姿を見つめていました。
笑顔でウエアを見せてくれたU-10のメンバーたち
取材/二木暁子 写真/多嘉山ぺルシー